車輪人の自転車日本一周・登山の旅 車輪人の自転車日本一周・登山の旅

2003年 7月25日 (金) - 383日目

天気 : 晴のち曇

体調 : 良好

宿泊地 : 北戸蔦別岳

本日の移動 : 日高町(幌尻岳登山へ)

走行距離 : 30.9km

累計距離 : 16,942km
本日の出費

食費 : 0円

観光費 : 0円

宿泊費 : 0円

雑費 : 0円

費用詳細 :

現在地 : 北海道日高町  ( 全走行図 )

虹と夕日

 「ガサガサ・・・ ガサガサ・・・」、夜中何時ごろだったかはっきり覚えてはいないが、そんな物音で目が覚めた。間違いなくビニール袋をあさっている音であり、そしてすぐに「しまった!!」と思った。昨日、ゴミ袋をそのまま外に出したまま寝てしまったことを思いだしたのだ。こりゃ不味い!眠い目を擦りながらも飛び起き、すぎにテント外にでた。犯人は”北キツネ”であった。キツネも驚いたようで、一瞬その場を離れようとするが、どうしても欲しいらしく、こちらを警戒しながらも袋を引き続きあさっていた。でも、さすがにこのまま散らかされては堪らないと、追っ払い袋を片付けたのだが、キツネは残念そうに何度も振り返り、そして最後は飛び跳ねるようにして去っていった。

 いよいよ登山の朝が明けた。約1ヶ月振りの登山であり、またこうして山行泊の本格的な登山は去年の夏以来だろうか。今年、一度だけ飯豊山で山行泊の登山をしたが、あれは山小屋泊りのこともあり、それほど”きつい”ということはなかったが、今回はその時と違い、もちろんテントを持っての山行で、山で泊るという、期待と不安が朝から込み上げてくる。ただ、言うまでもなく期待の方が大きいのは確かである。この北海道初めての登山、さらには久しぶりの山中泊だ。そこのまでの長い長いアクセスにやや不安があるものの、期待を胸に今朝、5時前には起床し準備を始めた。

 日記を昨日、少し残してしまっているだけに、ほんとは朝、済ませて置いてしまいたかったが、アプローチにどれだけの時間が掛かるか見当もつかない。そんな不安から時間的余裕はなく日記は諦め、6時には出発した。目指すは幌尻岳だ。国道、そしてチロロより林道へと入っていく。緩やかな坂がひたすら続く道で、途中、チロロ岩なども観光しながら久しぶりに広がる青空の下でどんどん上って行く事ができた。あまりの気持ちよさに、その分この先のダートで苦しめられるのではないか不安になるほどであったが、実際はそのダートがなかなかやってこない。ただ、見渡す限りの草原が広がり、そしてその中にポツンポツンと牛が放牧されているように見えるのだが、よく見てみるとその牛の数も半端ではない。ただ、あまりの草原の広さに牛が少なく見えてしまう。そんな中を抜けていくのだから爽快という意外になく、そして坂も緩やかなのだからどんどん走り抜けていける。山へと向っているとはとても思えない快走路だ。鼻歌混じりに走りぬけ、そしていよいよ問題のダートへと突入した。

登山口へ向けて
巨大なチロロ岩

 20km弱続くダート・・・ 最悪の場合は自転車を途中で置いて歩こうとも思っていた。それほど荷物満載の自転車にとってダートはきつく、また、それを考えて時間も余裕を持って、こうして出発してきたのだが、実際のダートは予想以上に緩やかで、それでいて砂利は深くなく、とても走りやすい。もう、スピードも衰えることなく気持ちよく苦もなく抜けて行ける。もうここも鼻歌まじりで、また渓流を何度も渡るのだが、そんなところでは熊を探しながらのんびりと進む。一度、ヒグマと言うものを見てみたいと思い、そんな好奇心を抱いての今回の登山だった。ただ、やはり怖いのも確かで、しっかりとスズを鳴らしながら走り、また、この鼻歌も実は熊よけでもあった。

ゲート1突破!
ゲート2突破!
とうとう見えた日高連峰

 2ヶ所のゲートを越えていく。途中、熊の糞らしいのも見つけ、ちょっとドキドキしながらも突き進み、そして最後の最後まで来たところで、急坂に苦しめられることになった。タイヤの空転により何度か転倒する有様であったが、それでも無事にダート終点である電力取水施設へと9時前には到達した。さあ、いよいよここからが登山本番だ!荷物をザックに詰め替えて北海道登山、第一歩を踏み出した。懐かしささえ感じる、このグッと肩に食い込むザックの重さ。何度も書くが去年の夏以来だ。ただ、今回はちょっと軽い。歩くことなくこうしてダートを突破できたおかげで、この先の登山もかなり楽になり、2泊3日の予定が、余裕を持って1泊2日で行けそうだ。そのため、荷物はだいぶ軽くはなったのだが、この肩に食い込む感覚、そしてズッシリと足にくる重み、忘れはしない感覚だが、でも、今回この重さに苦しめられ続けることになった。一歩一歩がもうしんどい・・・ ほぼ平坦の道なのに、これで本当に山に登って行けるのか不安にすらなるほどであったが、それでも気力を振り絞り、一歩一歩進んでいく。この辛さ、そして一向に変わらぬ景色、もうウンザリすらしてくるほどであり、でも、それでも自分に負けないために必死で登ってく。沢沿いを何度か渡渉したりもするのだが、でもその辺はとても楽ちん♪子供でも平気で渡れるほどだから苦もなく越えていく。ただ、最後の滝を越えた辺りから沢を離れ勾配は一気にきつくなり、息を上がらせ、汗は全身を濡らすほど噴出してくる。そんな時、”トッタの泉”と呼ばれる水場、ほんとここには救われる思いがしたが、でも、残念ながら直に飲むことが害虫の関係で出来ず、煮沸が必要で、悔しいがここでは自炊用の水の補給と、顔や手を洗うだけにとどめた。

さあ、頑張るぞ
まだまだ続く・・・
山々が連なる

 もうちょっと、もうちょっと、そう自分に言い聞かせながら這い上がっていくように登っていき、そしてようやく視界が徐々に開けてきた。そう、森林限界を超えたのだ。それとほぼ同時に稜線へと出る。ようやく開けた世界に今までの苦労が報われる思いがしたのだが、しかし、先ほどまでのあの雲ひとつない快晴は一変し、この時には雲が徐々に広がり始めていた。肝心の目指す幌尻岳も雲の中・・・ さすがに悔しくて堪らない思いだったのだが、でも明日があるさと言い聞かせて、稜線歩きへと踏み出していった。だが、ここからもまた大変。ここまで来ると勾配の方は大したことないのだが、ただ生い茂ったハイマツに今度は苦しめられることになった。時には背丈以上にまでなるところもあり、それに加えて、小さな虫がウヨウヨ・・・ もう目さえ開けれない。いや、それどころか、呼吸も出来ない状態で、さらにウンザリ・・・ 今回のこの北海道登山、もう嫌な思いばかりである。もう半べそ状態で草木を掻き分け進んでいった。そのとき、ザワザワと前方で・・・ とうとう出たか?熊か?と思わずドキドキしてしまいながら覗き込むと、意外、人であった。この幌尻登山で2組目だ。登山し始めた頃、一度他の登山者とすれ違ったのだが、あいさつ程度ですぐに別れ、そして今回の出会いはこの後、山頂を共にすることになった。まだまだ目指す幌尻岳山頂は先ではあるが、でも、その同じ稜線にあるこの北蔦別山。標高は1912m、天気はさらに悪化し、もういつの間に霧の中へと入ってしまっていたが、こうして無事に今日の目的の山頂へと13時頃登頂した。

 時間にも余裕があったため、もうちょっと先まで進もうか、このあと迷ったのだが、しかし、時期に霧雨が・・・ こりゃたまらんと、今日はここで落ち着くことにした。ただ、落ち着くと言っても、キャンプ場があると言うわけではない。いや、それどころかトイレも水もない。この山頂直下の稜線沿いのちょっとした平の部分を見つけ、そこにテントを張るしかない。そういうルートでの今回の挑戦なのだ。午後の時間はそんな山頂の一角で、ラジオを聴きながら読書と久しぶりに自分の時間を過ごしたような気がした。PCも持ってきている訳ではないので、日記も書きようがない。そういう束縛から今日は久しぶりに逃れ、読書にふけり幸せな時間を過ごした。

幌尻岳は雲の中・・・
霧の北戸蔦別山頂
稜線でひとり野営

 相変わらず天気は悪く厚い霧で覆われていた。せっかくのこの好展望地での野営であるのに、展望は楽しめず、夕日も無理だろうと完全に諦めていたそのとき、パッとテントが明るくなった。日が差したのだ。これは!と思い、テントから慌てて覗き込むと信じられないような青空が広がっていた。カメラ片手にそのまま表へと飛び出すと、目の前には夕日で染まり始めた雲海が広がり、そして背後の北蔦別山には見事なまでの虹が山頂を囲むように描かれていた。この背後の山を越えどんどん雲が山裾に沿って降りそそいでくる。その雲というか霧雨が虹を作っていた。ほんと幻想的な世界であったが、でも、難点も、この霧雨が自分にも降りそそぎ、雲海に沈み行く夕日を見送っていると、いつの間にか自分はビッショリに・・・ さらにテントも入り口を開けっ放しにして出てきてしまったために、中までもう湿っぽくなりベトベトに・・・ こんな失敗もあったが、でも登ってよかった!と心から思う、雲海と夕日、そして虹のサービスであった。

 その後、寒さに震えながら21時頃就寝した。

おお!晴れ間が!
綺麗な夕日じゃ!
なんと虹まで!!
山が雲に・・・
虹と幌尻岳
雲海に沈む夕日

 ★今日のお食事♪
 ・朝食 : おにぎり×4
 ・昼食 : チョコ・カロリーメイト
 ・夕食 : ごはん&レトルトカレー




自転車・自転車・自転車・自転車・自転車・自転車・自転車・自転車・自転車・自転車・自転車・自転車・自転車・自転車・自転車・自転車・自転車・自転車・自転車・自転車・自転車・自転車・自転車・自転車・自転車・自転車・自転車・自転車・自転車・自転車・自転車・自転車・自転車・自転車・自転車・自転車・自転車・自転車・自転車・自転車・自転車・自転車・自転車・